適用時期
新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用も認められています(会計基準第58項)。3月決算の会社であれば、2028年3月期が適用初年度です。
原則法と累積的影響額を
期首で調整する方法
適用初年度は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います(適用指針第118項)。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する |
| ただし書き | 適用初年度の期首より前に遡及適用した場合の累積的影響額を期首の利益剰余金に加減し、期首残高から新たな会計方針を適用する |
実務では、比較情報の作り直しが不要なただし書きの方法が多く選ばれると考えられます。以下の経過措置の多くは、このただし書きの方法を選んだ場合に使えるものです。
リースの識別の経過措置
ただし書きの方法を選ぶ場合、次のいずれか又は両方を適用できます(適用指針第119項)。
- 前期末に旧基準(企業会計基準第13号)を適用しているリース取引について、契約にリースが含まれているかの判断をやり直さずに新基準を適用する
- 旧基準を適用していない契約について、適用初年度の期首時点の事実と状況に基づいてリースを識別する
ファイナンス・リースだったリース
- 前期末のリース資産・リース債務の帳簿価額を、そのまま期首の使用権資産・リース負債とすることができます。残価保証額が含まれる場合は、期首時点の支払見込額に修正します。リース1件ごとに適用できます(適用指針第120項)
- 期首以後に使用権資産総額の重要性の判定(10パーセント)を超えても、期首の使用権資産・リース負債には、旧適用指針で選択していた簡便的な方法を継続できます(第121項)
- 旧適用指針で、個々のリース資産に重要性が乏しいとして賃貸借処理していたリースは、その処理を継続できます(第122項)
- 旧基準の適用初年度(2008年頃)より前に開始した所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃貸借処理などを継続している場合は、その処理を引き続き継続できます(第113項・第114項)
オペレーティング・リース
だったリース
旧基準でオペレーティング・リースに分類していたリースと、新基準で新たに識別されたリースについては、次のとおり処理できます(適用指針第123項)。
- リース負債:期首時点の残りの借手のリース料を、期首時点の追加借入利子率で割り引いた現在価値で計上する
- 使用権資産:リース1件ごとに、次のいずれかを選択する
- ① 新基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額(期首時点の追加借入利子率で割り引く)
- ② リース負債と同額(前期末の前払・未払リース料の分だけ修正)
- 期首時点の使用権資産に減損会計を適用する
- 少額リースとして計上しないリースは修正しない
①を選ぶと、使用権資産がリース負債より小さくなることが多く、差額は期首の利益剰余金の減少となります。一方、適用後の減価償却費は②より小さくなります。①と②のどちらを選ぶかで、期首の純資産と適用後の損益が変わります。
計算例(設例20)
X1年4月1日開始、借手のリース期間5年、年額10,000千円(毎年3月末払い)のオペレーティング・リースに、X2年4月1日から新基準を適用する例です。期首時点の追加借入利子率は年5%です。
リース開始日からの5年分を5%で割り引くと43,295千円、1回目の返済後の残高(=期首時点の残り4回分の現在価値)は35,460千円です。
① 開始日から適用されていたかのような帳簿価額とした場合(単位:千円)
| (借)使用権資産 | 34,636 | (貸)リース負債 | 35,460 |
| 利益剰余金 | 824 |
② リース負債と同額とした場合
| (借)使用権資産 | 35,460 | (貸)リース負債 | 35,460 |
①の使用権資産:43,295 − 過年度減価償却費 8,659(43,295 × 1年/5年)= 34,636
実務上の便法
第123項を適用する借手は、次の方法の1つ又は複数を、リース1件ごとに適用できます(適用指針第124項)。
- 特性が合理的に類似した複数のリースに、単一の割引率を適用する
- 期首から12か月以内にリース期間が終了するリースを、短期リースと同様に費用処理する
- 付随費用を期首の使用権資産から除外する
- 延長・解約オプションがある場合に、リース期間やリース料の決定にリース開始日より後に入手した情報(事後的判断)を使う
その他の経過措置
| 対象 | 主な取扱い |
|---|---|
| セール・アンド・リースバック | 期首より前の取引について、売却に該当するかの判断を見直さない。旧基準で売却損益を繰延処理していた場合は、その取扱いを継続し、使用権資産の減価償却費の割合に応じて損益に計上する(第126項) |
| 借地権の権利金等 | 償却していなかった旧借地権・普通借地権の権利金等は、使用権資産に含めたうえで償却しないことができる(第127項)。償却していた場合は、前期末の帳簿価額を期首の使用権資産とし、残りのリース期間で償却できる(第128項)。計上日から償却したものとして算定することもできる(第129項) |
| 建設協力金・敷金 | 将来返還される建設協力金等(敷金を除く)と、差入預託保証金のうち返還されない額について、適用前の会計処理を継続できる。長期前払家賃等の前期末の帳簿価額を期首の使用権資産に含めることもできる(第130項) |
適用初年度の注記と比較情報
ただし書きの方法を選ぶ借手は、会計方針の変更に関する通常の注記(企業会計基準第24号第10項(5))に代えて、次の事項を注記します(適用指針第125項)。
- 期首のリース負債に適用している追加借入利子率の加重平均
- 前期末に旧基準で開示したオペレーティング・リースの未経過リース料(上記の利率で割引後)と、期首に計上したリース負債との差額の説明
また、適用初年度の比較情報は、新たな表示方法に従った組替えを行わず(第136項)、新基準の注記ではなく旧基準の注記事項を記載します(第137項)。
理解度チェック
旧基準のオペレーティング・リース
について、期首の使用権資産を
「リース負債と同額」とする方法を
選ぶと、どうなりますか?
答えと解説を見る
答え:A 使用権資産をリース負債と同額(前期末の前払・未払リース料の分だけ修正)とするため、期首の利益剰余金への影響は原則として生じません(適用指針第123項(2)②、設例20)。
本記事は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(いずれも2024年9月13日 企業会計基準委員会)をもとにした一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、新リース会計適用支援サービスでご相談いただけます。
