このページは、2026年9月時点の法令等に基づく一般的な説明です。個別の取引への当てはめや適用時期の詳細は、法令・通達等の原文で確認するか、税理士にご相談ください。
会計と税務がずれる理由
新リース会計基準では、借手はほぼすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上し、減価償却費と支払利息を計上します。一方、法人税法は会計基準とは別にリースの扱いを定めているため、会計上の費用と税務上の損金の額・時期がずれることがあります。ずれは申告書(別表四・別表五(一))で調整し、将来に解消する差異には税効果会計を適用します。
| 税務上の区分 | 典型例 | 税務上の損金 |
|---|---|---|
| リース取引(売買扱い) | 解約不能でフルペイアウトの機器リースなど(旧基準のファイナンス・リース) | リース資産の償却費(所有権移転外はリース期間定額法) |
| 上記以外(賃貸借扱い) | 不動産の賃貸借、旧基準のオペレーティング・リースなど | 支払うべき賃借料(債務が確定した日の属する事業年度) |
税務上の「リース取引」(売買扱い)
法人税法上のリース取引(法人税法第64条の2)は、①賃貸借期間中の中途解約が禁止されている(又は解約時に未経過期間のリース料のおおむね全部を支払う)こと、②賃借人が資産からの経済的な利益を実質的に享受でき、使用に伴う費用を実質的に負担すること(いわゆるフルペイアウト)の両方を満たすものです。リース取引は、リース資産の引渡し時に売買があったものとして扱われます。
- 所有権移転外リース取引のリース資産は、リース期間定額法で償却します。償却費の計算は別表十六で行います
- 会計上の減価償却費は、税務上も償却費として損金経理した金額として扱われます
この区分のリースは、旧基準でもファイナンス・リースとしてオンバランスされていたものが多く、新基準の適用による影響は比較的小さいと考えられます。ただし、次のような場合は会計と税務の差が生じます。
- 期間の差:会計の借手のリース期間(延長オプションを含む)と、税務のリース期間(契約期間)が異なる
- 取得価額の差:会計の使用権資産に含める付随費用・原状回復費用などと、税務上の取得価額の範囲が異なる
- 残価保証の差:会計は支払見込額、税務は残価保証額を基に計算する
税務上の賃貸借として扱うリース
不動産の賃貸借など、税務上のリース取引に該当しないリースは、会計上オンバランスしても、税務上は賃貸借のままです。新リース会計基準への対応として、令和7年度税制改正で、この区分のリースの賃借人は、会計処理にかかわらず、支払うべき賃借料を債務の確定した日の属する事業年度に損金算入する取扱いが整備されました。
そのため、会計上の減価償却費と支払利息は損金とならず、代わりに支払うべきリース料が損金となります。差額は、別表四で加算・減算し、別表五(一)で使用権資産とリース負債の差額を繰り越して管理します。
不動産の賃貸借は件数・金額とも大きいことが多く、新基準の適用で申告調整の対象となる契約が大幅に増えます。契約ごとに会計と税務の差を把握できる仕組みが重要です。
申告調整の例
設例9-1と同じ条件(月額1,000千円、5年、年8%、リース負債・使用権資産49,318千円、4月開始・3月決算)で、税務上の賃貸借として扱う場合の1年目の差異は次のとおりです。
| 項目 | 会計 | 税務 | 差 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 9,864 | ― | 9,864 |
| 支払利息 | 3,643 | ― | 3,643 |
| 支払リース料 | ― | 12,000 | △12,000 |
| 費用・損金の合計 | 13,507 | 12,000 | 1,507 |
単位:千円。減価償却費は 49,318 ÷ 5年。支払利息は利息法による12か月分。
- 別表四
- 減価償却費9,864と支払利息3,643を加算し、支払リース料12,000を減算(純額1,507の加算)
- 別表五(一)
- 期末の使用権資産 △39,454、リース負債 40,961 を繰り越し(純額1,507)
この差異は、リース期間の前半に加算、後半に減算となり、リース期間の終了時にはゼロに戻ります。期中に契約の変更・解約・減損があった場合も、会計上の処理とは別に税務上の損金を計算する必要があります。
消費税
消費税の扱いも、税務上の区分によって異なります。
| 税務上の区分 | 仕入税額控除の時期 |
|---|---|
| リース取引(売買扱い) | 原則として、リース資産の引渡しを受けた日にリース料総額に係る消費税を一括して控除 |
| 賃貸借扱い | リース料の支払期日ごとに控除(資産の貸付けに係る役務の提供として扱われる) |
会計上は使用権資産・リース負債を税抜で計上する場合でも、消費税の控除は上記の時期に行われるため、会計の計上と消費税の処理を分けて管理します。
また、賃貸人が適格請求書発行事業者でない場合は、仕入税額控除の経過措置(控除できる割合が段階的に80%→70%→50%→30%と縮小)の対象となります。売買扱いのリースでは引渡し時に一括で控除するため、引渡し日の属する期間の割合がリース料総額に適用されます。賃貸借扱いでは、支払期日ごとにその時点の割合を適用します。
税効果会計
税務上の賃貸借として扱うリースでは、会計上の使用権資産とリース負債に対応する税務上の資産・負債がないため、両方に一時差異が生じます。
| 項目 | 一時差異 | 繰延税金 |
|---|---|---|
| 使用権資産 | 将来加算一時差異 | 繰延税金負債 |
| リース負債 | 将来減算一時差異 | 繰延税金資産(回収可能性の判断が必要) |
上の例で法定実効税率を30%とすると、1年目の期末は次のとおりです(単位:千円)。
- リース負債 40,961 × 30% = 繰延税金資産 12,288
- 使用権資産 39,454 × 30% = 繰延税金負債 11,836
- 純額では繰延税金資産 452(= 申告調整の累計 1,507 × 30%)
リース開始日は使用権資産とリース負債が同額(49,318)のため、純額はゼロです。繰延税金資産の回収可能性は、繰延税金負債の解消スケジュールや、企業の分類(「税効果会計に係る会計基準の適用指針」)に基づいて判断します。貸借対照表では、同じ納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は相殺して表示します。
税務上の売買として扱うリースでも、期間・取得価額・残価保証の差がある場合は、その差について一時差異が生じます。
理解度チェック
税務上の賃貸借として
扱うリースで、
会計上の減価償却費と支払利息は、
税務上どう扱われますか?
答えと解説を見る
答え:B 令和7年度税制改正で、税務上のリース取引に該当しないリースの賃借人は、会計処理にかかわらず、支払うべき賃借料を債務の確定した日の属する事業年度に損金算入する取扱いが整備されました。差額は申告書で調整します。
本記事は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(いずれも2024年9月13日 企業会計基準委員会)をもとにした一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、新リース会計適用支援サービスでご相談いただけます。
