変更の会計処理の全体像
リースの契約条件の変更とは、当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又は対価の変更をいいます(会計基準第24項)。借手は、変更が生じた場合、変更前のリースとは独立したリースとして処理するか、リース負債の計上額の見直しを行います。複数の要素がある場合は、両方を行うことがあります(会計基準第39項)。
②③は、変更の発効日(両当事者が変更に合意した日)に、変更後の条件を反映した借手のリース期間とリース料の現在価値までリース負債を修正します(適用指針第4項(10)、第45項(1))。
独立したリースとして処理する場合
次の両方を満たす場合は、変更を独立したリースとして扱い、そのリース開始日に新たなリース負債と使用権資産を計上します。既存のリースの会計処理は修正しません(適用指針第44項、設例15-1)。
- 1つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されること
- 借手のリース料が、範囲が拡大した部分の独立価格に、契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
契約期間の延長だけでは原資産の追加に該当しないため、独立したリースにはなりません(BC73項)。
リースの範囲が縮小される場合
面積の縮小や契約期間の短縮など、リースの範囲が縮小される変更は、変更前のリースの一部又は全部を解約するものと考えます(BC74項)。リース負債を修正し、一部解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額し、両者の差額を損益に計上します(適用指針第45項(2)①)。
設例15-2では、5,000㎡の事務所を2,500㎡に縮小し、年間リース料を50,000千円から30,000千円に変更しています。
範囲の縮小(面積50%)(単位:千円)
| (借)リース負債 | 105,309 | (貸)使用権資産 | 92,001 |
| 利益 | 13,308 |
単価の増額(残る2,500㎡の面積に対して年30,000千円)
| (借)使用権資産 | 24,575 | (貸)リース負債 | 24,575 |
リース負債210,618千円・使用権資産184,002千円の50%を減額し、その後、残りの5年分の年30,000千円を変更後の割引率5%で割り引いた129,884千円までリース負債を修正しています。
その他の変更(単価・期間延長など)
範囲の拡大(独立したリースに該当しないもの)、リース料の単価のみの変更、契約期間の延長などは、変更前のリースを修正する会計処理を行います。リース負債の修正額と同額を使用権資産に加減し、損益は生じません(適用指針第45項(2)②、BC75項)。
- 契約期間の4年延長:リース負債を346,511千円から597,130千円に修正し、差額250,619千円を使用権資産に加算(設例15-4)
- 年間リース料の減額(100,000千円→95,000千円):リース負債を421,236千円から389,519千円に修正し、差額31,717千円を使用権資産から減額(設例15-5)
拡大と縮小が同時に起きる場合
1つの変更に複数の要素がある場合は、独立したリースとしての処理とリース負債の見直しの両方を行うことがあります(会計基準第39項)。例えば、不動産の賃貸借で、独立価格であるリース料により面積を追加すると同時に、既存部分の契約期間を短縮する場合は、前者を独立したリースとして、後者をリース負債の見直しとして処理します(会計基準BC49項)。拡大と縮小の両方が生じる場合の計算は設例15-3に示されています。
契約条件の変更を伴わない見直し
契約条件が変わっていなくても、次の場合はリース負債を修正し、修正額を使用権資産に加減します(適用指針第46項・第47項)。
- 借手のリース期間に変更がある場合(リース期間の見直し)
- 購入オプションの行使の判定に変更がある場合
- 残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合
- 指数又はレートに応じて決まる変動リース料に変動がある場合
使用権資産をゼロまで減額してもなおリース負債の減額がある場合は、残額を損益に計上します(適用指針第46項ただし書き)。
設例16では、新規スタッフの採用・配置の決定により延長オプション(5年)の行使が合理的に確実となり、リース負債を186,162千円から378,174千円に修正し、差額192,012千円を使用権資産に加算しています。
割引率について
IFRS第16号は、変更の状況ごとに変更前・変更後のどちらの割引率を使うかを詳細に定めていますが、日本の適用指針では定めていません(BC76項・BC79項)。設例では、範囲の縮小に変更前の割引率、単価の増額や期間延長に変更後の割引率を使う例が示されています。企業として方針を決めて、首尾一貫して適用することが重要です。
理解度チェック
フロアの一部を返還して
リースの範囲が縮小した場合、
使用権資産の減少額と
リース負債の修正額との差額は
どう処理しますか?
答えと解説を見る
答え:A リースの範囲が縮小される変更は、一部解約と考え、使用権資産の帳簿価額を減額し、リース負債の修正額との差額を損益に計上します(適用指針第45項(2)①)。単価の変更や期間延長などは、修正額を使用権資産に加減します。
本記事は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(いずれも2024年9月13日 企業会計基準委員会)をもとにした一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、新リース会計適用支援サービスでご相談いただけます。
