借手のリース期間の決め方
借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の両方の期間を加えて決定します(会計基準第31項)。
- 借手が行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間
- 借手が行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間
借手のみが解約する権利を有している場合は、借手が利用できるオプションとして考慮します。貸手のみが解約する権利を有している場合、その期間は借手の解約不能期間に含まれます(第31項)。
リース期間は、リース負債・使用権資産の金額に直接影響します。期間が長いほど、計上額は大きくなります。
「合理的に確実」とは
「合理的に確実」は、蓋然性が相当程度高いことを示しています。米国会計基準の結論の根拠では、発生する可能性の方が発生しない可能性より高いこと(more likely than not)よりは高いが、ほぼ確実(virtually certain)よりは低いと説明されています(適用指針BC29項)。
リース期間は、経営者の意図や見込みだけで決めるのではなく、オプションを行使する経済的インセンティブを生じさせる要因に焦点を当てて決定します(適用指針BC30項)。過去の慣行は参考になりますが、過度に重視せず、将来の見積りに焦点を当てます(BC33項)。
考慮する経済的インセンティブ
適用指針第17項は、次の要因を例示しています。
- 延長・解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
- 大幅な賃借設備の改良の有無
- リースの解約に関連して生じるコスト
- 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
- 延長オプション又は解約オプションの行使条件
解約不能期間が短いほど、代替資産の調達コストを考えると延長の可能性が高くなる場合があり、逆に十分に長い場合は延長の可能性が低くなる場合があります(BC31項)。
普通借家・普通借地契約の考え方
日本の普通借家契約では、貸手は正当な事由がなければ更新を拒絶できないため、契約期間が1年でも、借手は1年を超える期間について延長オプションを有していると考えられる場合があります(設例8-1)。
設例8では、解約不能期間を出発点に、経済的インセンティブを総合的に勘案し、「その期間までは合理的に確実といえるが、それを超えると可能性が下がる」期間を借手のリース期間としています。
| 設例 | 主な事実 | 借手のリース期間 |
|---|---|---|
| 8-2 店舗(普通借家) | 契約1年・毎年更新。重要な建物附属設備(物理的使用可能期間10年)を設置、概ね5年でリニューアル。戦略的に重要な店舗ではない | 5年 |
| 8-3 店舗(普通借家) | 8-2と同様だが、戦略的に重要な店舗で損益だけで撤退しない。10年目以降は附属設備の全面再設置が必要 | 10年 |
| 8-4 土地(普通借地) | 契約40年・6か月前通知で解約可。建物の物理的使用可能期間20年、途中解約なら解体費用 | 20年 |
| 8-5 オフィス(普通借家) | 契約5年・解約不能。重要な附属設備なし、代替立地あり | 5年 |
設例は判断のための思考プロセスを示すもので、前提条件やビジネスモデルが異なれば結論も異なり得る点に留意が必要です(設例8の冒頭)。また、附属設備の耐用年数とリース期間は、それぞれの判断の閾値が異なるため、必ずしも一致しません(BC34項)。
リース期間の見直し
契約条件の変更がなくても、次の場合はリース期間を見直し、リース負債を修正します。
- 借手の統制下にあり、かつ、オプション行使の判断に影響を与える重要な事象又は状況が生じたとき(会計基準第41項)。例えば、予想していなかった大幅な賃借設備の改良、原資産の大幅な改変、リース期間後の期間に係るサブリースの締結、関連する事業上の決定など(BC51項)
- 延長オプションの行使等により、借手の解約不能期間に変更が生じたとき(第42項)
市場動向による変化だけでは見直しを要しないよう、「借手の統制下にある」という要件が設けられています(BC51項)。見直しの会計処理は契約条件の変更とリース負債の見直しで解説します。
再リースの取扱い
日本の再リースは、当初の月額リース料程度の年間リース料で行われる1年間のリースが一般的です(会計基準BC27項)。リース開始日(又は直近の契約条件の変更の発効日)に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理できます(適用指針第52項)。
理解度チェック
契約期間2年で更新できる
普通借家契約の、
借手のリース期間は
どう決めますか?
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答え:B 解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加えて決めます(会計基準第31項)。経済的インセンティブを総合的に勘案します(設例8)。
本記事は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(いずれも2024年9月13日 企業会計基準委員会)をもとにした一般的な解説です。個別の取引への当てはめは、事実と状況に応じて判断が必要です。判断に迷う場合は、新リース会計適用支援サービスでご相談いただけます。
